イタリアのアジア人差別 永遠の都ローマ編
- スーパーエイジ

- 9月9日
- 読了時間: 9分
更新日:11月2日
🟡 はじめに|イタリアのアジア人差別は本当にあるのか?
「イタリアのアジア人差別」――これは、GoogleやYahoo!などの検索ワードでよく見かけるフレーズです。
ですが、実際にそのような差別が存在するのか、また、どのような場面で起こるのかは、日本からはなかなか見えにくいものかもしれません。
こんにちは。パリ在住27年、そして毎年の夏をローマで過ごしているエイジです。
この記事では、僕がローマという街で、実際に体験したアジア人差別について、リアルな言葉で記録していこうと思います。
この差別は、目には見えません。
でも確かに、心にチクッと刺さる瞬間があるのです。
それは、まるで海で泳いでいるときに、透明なクラゲに刺されるような感覚。

見えない。
気づかない。
でも、確実に痛い。
そして、誰も助けてくれない。
このブログ記事では、そうした差別の種類と実体験をもとに、
どういった場所で
どのような人から
どんな形で差別が起きた
のかを丁寧にお話ししていきます。
🟥 第1章|「チネーゼ!」と突然叫ばれる、耳の暴力
イタリアで体験するアジア人差別の中でも、特にショックだったのがこのタイプです。
私は個人的に、それを**「チネーゼ絶叫系アジア人差別」**と呼んでいます。
「チネーゼ」とは
「チネーゼ(Cinese)」とは、イタリア語で「中国人」の意味です。
それ自体は差別用語ではありません。
ただし、街中で突然この言葉を怒鳴るように浴びせられるとしたら――それはまさに、見下しと侮蔑の感情が込められた行為に他なりません。
とくに、アジア人全体をひとくくりにして、“中国人だろ?”と突きつけてくるような差別的態度は、イタリアでも時々見られます。
僕自身、中国人に差別感情はありませんが、一般論的に言えば僕の周囲のイタリア人で中国人にネガティヴな感情を抱いてる人は少なくありません。
実際に僕がローマで体験した、3つの「チネーゼ絶叫系」の事例を紹介します。
📍 ケース①:サン・ロレンツォ地区での出来事
ローマの中心駅・テルミニ駅からほど近い「サン・ロレンツォ地区」は、庶民的で学生が多く住む街です。
週末にはバーやレストランが賑わい、Airbnbの宿泊料金も比較的安いため、僕も何度か滞在したことがあります。
ですがその日は、思いもよらない体験をしました。
昼間、街を歩いていた時、50代くらいのイタリア人男性が道端に立っていました。
服装や雰囲気から、ドラッグのディーラー風に見えたその男性。
私が彼の横を通り過ぎた瞬間――

「チネーゼ!!!!」
と、突然、耳元で怒鳴られたのです。
あまりの声の大きさに、本当に腰を抜かしそうになりました。
まったく知らない人に、いきなり叫ばれるという体験は、想像以上に心を削られます。
反論する余裕もなく、その場をすぐに離れました。
危険な雰囲気を感じたら「逃げるが勝ち」です。
📍 ケース②:ティベレ川沿いの屋台で
次は、歴史地区と高級住宅街プラチ地区の境界にある、ティベレ川沿いの露店エリアでの出来事です。
夏の間、ここでは小さなバーや雑貨屋台が並び、観光客や地元の人たちで賑わっています。
ある日、私は何気なく川沿いを散歩していました。
すると、屋台のひとつから、若いローマ人の店員が私を見てこう言ったのです。

「チネーゼ!」
周囲には他に誰もおらず、私の他に呼びかける人はいませんでした。
たった一言ですが、それは明らかにからかいと嘲笑のニュアンスを含んだものでした。
📍 ケース③:フラミニオ地区の小学生
最も心に残っているのが、フラミニオ地区での体験です。
ここは、ポポロ広場の北側に広がる、閑静な住宅エリア。
観光客が多く訪れるエリアとは違い、地元の家族連れが多く住む地域です。
ある日、そのフラミニオの街角で、すれ違った小学校高学年くらいの男の子が、突然、私の耳元でこう叫びました。
「チネーゼ!」
驚いたのは、その子の隣に親がいたにもかかわらず、まったく注意をしなかったことです。
無関心、あるいは黙認。
それはつまり、「こうした差別が家庭の中で放置されている」ことを意味します。
差別は教育の中で引き継がれていく――そう感じた瞬間でした。
その言葉が与える傷
このような「チネーゼ絶叫系」の差別で何より辛いのは、
突然、耳に響く大声
人格を否定されたような感覚
その後もしばらく心がザワザワする後味
そして、それを誰にも説明できない孤独感。
僕にとっては、このような体験こそが、まさに「クラゲのように見えないけれど痛い差別」でした。
▶️ 関連動画
📺 『イタリアのアジア人差別|ヴェネツィア編』
🟧 第2章|チンチョン系アジア人差別とローマのビーチクラブ
「イタリアのアジア人差別」には、もうひとつ別のタイプがあります。私はそれを、「チンチョン系差別」と呼んでいます。
もし「チネーゼ絶叫系」が、突然耳を襲う“爆発型の差別”だとすれば、この「チンチョン系」は、じわじわと滲み出る“嘲笑型の差別と言えるかもしれません。
🏖️ 舞台はローマの海「オスティア」

あまり知られていませんが、ローマにもビーチがあります。
正確には、ローマから南西に電車で1時間弱の場所にある「オスティア(Ostia)」という海沿いの街。
いわば、ローマ市民にとっての“週末の海です。
パリで言えば、ドーヴィルやオンフルールのような存在かもしれません。
私はこのオスティアのビーチクラブに、毎年のように通っていました。
🌴 ビーチクラブとは?
イタリアのビーチクラブ(Lido)は、日本の「海の家」とは少し違います。
パラソルとサンベッド
屋外シャワーと更衣室
バーやレストラン
美しく整えられた砂浜
こうした設備が一体化していて、1日ゆったりと滞在できる空間です。
私は、毎年同じクラブに通うことで、ちょっとした“常連さん”のような存在になっていました。
😌 最初はとても感じの良かったスタッフたち

最初の数年間は、スタッフもみな親切で、笑顔で迎えてくれていました。
私も丁寧に挨拶をし、礼儀を大切にしながら過ごしていたつもりです。
「いい場所を見つけたな」と思っていた矢先――ある年から、明らかに空気が変わり始めました。
😐 「チンチョン」と嘲笑されるように
ある日、飲み物を注文しようとバーに立ち寄ったときのこと。
マグレブ系移民とローマ人のスタッフたちが、笑いながら私を見てこう言ったのです。

「チンチョン!」
何度も何度も、冗談のように繰り返す。
私はその場で、「やめてください」と何度も伝えましたが、彼らはヘラヘラと笑いながら、からかいを続けました。
💢 嫉妬の匂いと差別のハリセンボン
この時、私はこう感じました。「これは人種差別というより“嫉妬”なのではないか」と。
なぜなら、私はアジア人でありながら、

3週間も連続でバカンスを楽しんでいる
毎年同じクラブに現れる
静かに、礼儀正しく過ごしている
こうした姿が、彼らの心の中に何らかの苛立ちを生んだのかもしれません。
✊ 私の反撃:ひと言で態度を変えた
私はある日、しっかり目を見てこう言いました。
「なぜそんな態度を取るのですか?私はお客様です。あなた方の給料は、私たちが払っているお金から出ているのですよ。最低限のサービスはしていただきたい。」
その瞬間、彼らは黙りこみました。
しばらくしてからは、「チンチョン」と言われることはなくなりました。
しかし、私はそのクラブを離れ、翌年から別のビーチクラブを選ぶようになりました。
🏝️ 翌年、オーナーが変わっていた
不思議なことに、翌年にそのクラブを訪れてみたところ、以前のスタッフたちは姿を消しており、オーナーも変わっていました。
環境は人を変える――あるいは、人が環境を変えるのかもしれません。
🇪🇺 比較される「白人」とのサービスの違い

実はこの差別、「アジア人であること」だけでなく、「フランス人でないこと」も関係していたように思います。
私は一度、フランス人の友人とそのクラブに行ったことがあります。すると――
私には素っ気ない対応
友人には笑顔と丁寧な挨拶
この差を見たとき、私は思いました。
“ローマ人にとって、フランス人はラテン民族の同士。でもアジア人は、ただのよそ者。”
もちろんこれは一部の人に限った話ですが、「EU内の見えない階級意識」のようなものが、サービスにも表れているように感じました。
🟩 第3章|イタリアのアジア人差別は、どれくらいの頻度で起きるのか?

ここまで、実際に体験した「チネーゼ絶叫系」「チンチョン系」の差別をご紹介しました。
では実際に、こうした差別はどのくらいの頻度で起きるのでしょうか?
🧮 15年のローマ滞在で5回の差別
私はこれまでに15年以上、毎年ローマに通っています。
滞在期間は、だいたい1ヶ月〜2ヶ月半。
その中で、明確に差別を受けたと記憶しているのは5回ほどです。
単純計算で、3年に1回あるかどうか。つまり、非常に頻繁に起きるわけではありません。
🧳 観光旅行者は差別に遭いにくい?
特に観光客としてローマを訪れる場合、アジア人差別に遭う確率はかなり低いと思います。
なぜなら、多くの旅行者は
歴史地区(トレヴィの泉、スペイン広場、コロッセオ周辺)
バチカン市国やその周辺
交通の便の良いエリア
などに滞在するからです。
私が差別を経験したのは、
サン・ロレンツォ地区(下町・移民が多い)
フラミニオ地区(閑静だが保守的)
オスティアのビーチ(地元民の憩いの場)
といった、地元住民の生活圏が中心でした。
🏡 フランスでも起きている“郊外型の差別”
ちなみに、これはイタリアに限った話ではありません。
たとえばフランスでも、ヴェルサイユやフォンテーヌブローといった、外国人の少ない郊外の高級住宅地では、日本人が“よそ者扱い”をされることがあります。
同僚の日本人も、そうした地域で近所付き合いに苦労したと話していました。
🤝 とはいえ、ローマ人は基本的に温かい
ここまで差別の話ばかりになってしまいましたが、私の個人的な印象では――
ローマ人はとても親切で、懐の深い人が多いです。
気さくで、明るく、ユーモアのある人たち。
実際、私が「ローマに住みたい」と思うほど、この街の人々には温かさがあります。
🐾 まとめ|クラゲのような差別と、ローマという街
イタリアのアジア人差別は、見た目には分かりません。
でも、ときどき、心にピリッと刺さる言葉や態度があるのも事実です。
「チネーゼ!」「チンチョン!」という言葉は、私たちが軽く受け流せるものではありません。
ですが、それは一部の人間による、限られた場面での話でもあります。
🕊️ ご感想・体験もお待ちしています
もし、この記事を読んで「似たような体験がある」「私の場合は違った」など、感じたことがあれば、ぜひコメントやSNSでシェアしてください。
「イタリアのアジア人差別」は、誰かにとっての“過去の傷”であると同時に、これから旅をする誰かへの“静かな注意喚起”でもあります。




